２． 道義国家の勧め
前章に述べた地球国家論をふまえ、前節の常設国連軍の創設をはじめとする地球国家創設への道を日本が推進しようとすれば、まず日本自体がその言動により道義国家としての地位を国際的に確立し、それを武器として行動することが必要であると考える。 「道義国家」の内容は世界人権宣言の内容の実現を目指すことである。 それを以下で具体的に述べていく。
Ⅰ 目標設定
１ 地球国家
究極の目的としては「主権国家」を廃止して世界政府をつくり、汎地球的に世界人権宣言の内容が実現することを目指す。 そのとき、地方は州として分権する。 日本は国家目的としてこれを明確に宣言し、それに役立つか否かで政策を選択する。
２ 連邦制
地球国家ができる前に、各国がある程度の独立性をもった「地域国家」として存続し、世界が連邦制をとる段階があるであろう。 そのときももっとも基本的な法はひろく世界に施行され、各国はその範囲で国内統治をすることになる。 その時、連邦はそれ自身の軍隊を持ち、国際紛争の勃発を防ぐ役割をもつ。 各国も一応はそれぞれの軍隊をもつであろうが、それは国際紛争解決の手段ではなく、国内警察のような役割になる。
３ 過渡的過程としての国連などの国際機構の強化
地球国家への道のりは遠く、それはただ待っていたのでは実現出来ない。 そこで現状で何が出来るかを前向きに考える必要がある。 その結果、浮かぶのが現在ある国連などの国際機構の強化と、世界を主権国家のエゴではなく、法の支配するところに変ずるための国際条約などの整備である。
と同時に、法の支配する世界を作りあげていく過程で自然と解決される問題も数多あることが考えられ、期待される。 そのような例を考えることもこれを推進する上で大きな力となるであろう。
Ⅱ 日本の適格性
日本は次の諸点において、地球国家創設のために行動するのに、地球上でもっとも適格な國である。
（１） 平和憲法 前文、第９条
前文、とくに「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理念を深く理念するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」は日本の行動の原点となるべき思想である。 そして「日本国民は、国家の名誉をかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う。」を形に表すのが「道義国家」を標榜しての行動である。
（２） 広島、長崎の経験
日本は前大戦の経験により、戦争の無意味さとその惨禍をもっともよく知る国民の一つである。 その中には沖縄や広島、長崎の経験も含まれる。 従って戦争のない世界を築くことを希求するもっとも大きな動機をもつ。
（３） 国力
日本は軍事力はないが、人口、経済力から言って、人道的国際条約締結を主導したカナダ、ノルウェーなどの中堅国家にはない影響力をもつ。 従ってこの分野でもこれらの国に劣らぬ力を発揮することが出来、成果も望まれる。
（４） 宗教における無色性
イスラム諸国が強いイスラム教色を持ち、アメリカや主要ヨーロッパ諸国がキリスト教色を持つのに対して、日本は無宗教とも称せられる無色な存在である。 国民は強いてあげれば仏教色をおびるが、仏教はもともと宇宙の理法を行動の指針とする宗教で、世界の創造主たる人格神をいただく一神教とは異なる宗教的寛容性を持っていて、国としても他宗教との摩擦も少なく振る舞える利点を持つ。
Ⅲ 具体的行動
まずは日本は国是として地球国家を創成して世界人権宣言の理想を汎地球的に実現することを目指すことを宣言する。 このような気宇壮大な目標を掲げることは、国民精神を高揚し、国民ひとり一人の行動を活性化する上からもこの上なく大切である。 関連した議論が「時事所感」欄の「次なる国家目標」にあるので参照して欲しい。
そしてこの宣言のもとで具体的行動に移るのであるが、その行動が実効性を持つためには、まずは日本が道義国家であることを諸外国が否応なしに認めるような国造りをしなければならない。 そして「道義国家」と認められるためには、大きく分けて２つの面での実践が必要である。
その１は内政面で、国内において単に物質面の伸長を図るだけではなく、弱者にも充分気配りした、真に国民ひとり一人の幸福を追求する体制を作りあげることである。 そしてそ２は外交面で、常に国益よりも世界益を優先して考えて行動することである。
こうして日本が真に道義国家であると認められて、各国、各国民が『日本の提唱することは、部分的には自分たちに少し不利益でも、日本がそう言うのなら仕方があるまい』とまで考えるようになることが理想である。 そこまで行くためには、常に正論を愚直に唱え、真に世界のためだけを考えた施策を具体的に実行しくことが求められる。 日本の行動指針としては、「愚直」ということがごく大事である。
以下では「道義国家」をアピールするためになすべき行動を、内政面と外交面とのわたって思いつくままに幾つか挙げる。
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