最善の政治制度

１　　概括

　　地球国家の基本原則は民主的であることである。　民主的政治形態で代表的なのは、ひとつは大統領制であり、もうひとつは議院内閣制である。そして議会には１院制と２院制とがある。　私は地球国家の政治制度としては、２院制の議会と議員内閣制との組合せが最善であると考える。　そして、主権国家が分立する現在の世界では、主権国家の政治形態も同様と考える。
　　議会は下院と上院の２院からなる。　そして行政府である内閣は下院で多数を占める政党が組織する。　下院は一つの政党が安定多数を占めることが容易になるように、小選挙区を主体とする選挙制度で議員を選ぶ。　こうすることで、行政府と立法府とが対立して政治が停滞することが少なくなり、「決められる政治」が実現する。
　　一方、上院は民意分布を出来るだけ詳細に反映するように、全国区比例代表制の選挙制度で議員を選ぶ。　その際、立候補団体に対する制限を取り払って、供託金はゼロもしくは名目的な小額（１人10万円以下）とし、立候補は１人でも出来、２人以上が任意に手を組んでもよいとする（「参議院のあり方」参照）。　こうすると、与野党など政党の枠に縛られない無党派の一般市民が容易に進出することが出来、一般市民の民意を上院の議論に反映出来る。　そして多くの場合、この種の無党派議員の集まりが上院のキャスティングボートを握って、一般市民の民意が特定政策の成否を支配することも出来るようになって、「コピー国会」や「ねじれ国会」の嘆きがなくなる。

２　　詳論

　　以前は、日本、英国など、国民の同質性の強い「国民国家」では議院内閣制がよいが、民族、宗教などの異質性の強い地球人を統括する政治形態としては、前地球人により直接選ばれて強力な指導力を発揮できる大統領制がよいのではないかと考えていた。　しかし、米国のオバマ政権第１期目の半ばに野党・共和党が下院の多数を得てのちは政治が停滞した事例をみることで、この考えが変わり、地球国家でも議院内閣制が良いと考えるようになった。
　　議院内閣制のよいところは、行政府と立法府とが対立して政治が停滞する恐れが少ないことである。　その一方で欠点と考えられるのは、政治の最高責任者たる首相が与党党首として「調整型」の人が選ばれやすく、カリスマ性に欠けて、大改革を主導しにくいことである。　しかし、現在の英国の首相、デービット・キャメロンは下院に議席を得て4年後の保守党の党首選に勝って党首となり、2010年5月に43歳7カ月で首相の座についた。　本来は「調整型のリーダー」だが、それなりのカリスマ性を持っており、無党派層の支持も得ているとのこと。　従って、議院内閣制のもとの首相が統括力に劣るとは言いにくいように思う。　私は今、地球国家について、次のような政治形態を考えている。
　　地球国家では行政府は議院内閣制をとる。　そして対する立法府たる議会は上院と下院とからなる２院制をとる。そして、下院で多数を占める与党が首相を出し、首相が内閣を組織する。
　　立法府・議会は、すべての法律がそこで決まり行政府はその法律に基づいて施策を実行する、という言う意味で、地球国家においても最高の権威を持つ。　しかし、政治がまともに動くためには、与党・内閣がその任期中は存分に腕をふるって打ち出した政策体系を実行し、結果の是非を次の選挙に問うことが出来るような環境を整えることが重要である。
　　そのために、議会のうちの下院は一つの政党が安定多数を獲得することが容易になるように、小選挙区制で議員を選出する。　議員の任期は４年が適当だろう。　それに対し、上院は6年程度の任期で半数交代とし、選挙区を全地球区一本とした比例代表制とする。　そうすることにより、上院は全地球人の意見分布を忠実かつ詳細に表現する。　のみならず、立候補団体への制限を極めてゆるいものにするなどの選挙制度改革により、与野党のいずれにも属さない無党派の一般地球人の進出が容易になり、上院では無党派議員集団がキャスティング・ボートを握ることが期待される（「参議院のあり方」参照）。　そうすれば、上院が与党議員が多数の場合の何でも賛成の「コピー議会」になることも、野党議員が多数の場合の何でも反対の「ねじれ議会」になることもなく、上院が全地球人の意見分布を反映して是々非々の立場を貫き、、政治がスムースに進むことが期待される。
　　大統領制のひとつの特色は、大統領も議会もそれぞれその任期を全うすることが出来ることである。　それに対し、議員内閣制では、下院は首相の不信任を議決して退陣を要求することが出来、それに対抗して内閣は下院を解散して国民の信を問うことができるので、内閣も下院も任期途中で辞めることがある｡　しかし、ここに描いた２院制議会と議院内閣制の組み合わせでは、与党多数の下院では内閣不信任を決議することはまず起こらず、解散のない上院もキャスティング・ボートを握る無党派議員集団が野党の単に反対のための問責決議案の成立を阻止するので、内閣も議会も下院の任期満了までその地位を全うして任務を果たすことが出来る。
　　現在の私は、概括で述べた政治体制が地球国家にもっともふさわしいものと考えている。

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