岩崎玲子さんは旧姓「高橋」、伸子の実践女子大学での同級生で、伸子の生涯を通じて最も親しいお友達の一人でした。 伸子は玲子さんとそれぞれ名前で「玲子」、「伸子」、と呼び交わし、大学時代は家が歩いて１０分足らずの近くにあったこともあって、しばしば互いに泊まりに行ったり来たりして、勉強も遊びもいつも一緒にしていました。 この文章は玲子さんが今年の２月頃から書き始められたものだそうで、とてもお忙しい中、書いたところだけでも、とお送り下さったものです。 お暇を見付けての続きを期待しています。
伸子の思い出
岩崎玲子
ご無沙汰いたしてしまいました｡ お寒い毎日ですが如何お過ごしでいらっしゃいますか？ 伸子の思い出は限りなく有りますが、いざ文章にして書きます事は文才の無い私には上手に書けません。 しかしそこはなにとぞお許し頂く事にして、楽しかった青春時代をお知らせいたします。
すでに皆様が伸子についてお書きになっておられるように､本当に真面目でよく努力をなさる方でした｡ その事は皆様よくご存知なので、よく学びよく遊んだ事を書きたいと思っております。
１ 歌舞伎と映画が大好き
伸子は歌舞伎は1ヶ月に2回は行っていました｡ 良いお席(一階席)は私も一緒に楽しく観劇しましたが、伸子はその他に3階席でも観に行っていました(私はパス)。 特に歌右衛門が大好きで、おこずかいは全部歌舞伎を観ることに回していたようです｡ われわれのグループで､男が女になって変、と言いますと、あの大きな目を丸くして怒っていました。 私は歌右衛門より左団次の方が好きでしたので、こっちが良いとかあっちが良いとか言い合いをしながら歌舞伎座に通っていました｡
そして映画もまた大好き、特に長谷川一夫の大ファンで､これまたよく観ていたようでした｡ 私はあまり興味が無かったのでお付き合いはしませんでしたが・・・。 休講がありますとその時間をそれーと言って映画館に通い、次の授業が始まる時間になると講義を聴きに帰るのは決まって私。 私が真面目、と言うことではなく、あまり映画が好きではなかったと言う事です。 その時のノートは私のがぐるーとひとまわりして着手・・。 時間に抜け出して行く時のスリルは、たまらなく楽しいものでした。
２ 伸子のオシャレ
私達のグループでナイロンのストッキングを常に履いているのが伸子。 今では当たり前のように皆さん履いていますが、当時はすごく高価なもので中々はけませんでした。 ところが伸子はいつもストッキング。 あるとき「どうしていつもナイロンの靴下なの」と訊きましたら・・・「だーって玲子みたいに足が長くないもの。 普通の靴下だとなお足が短くなるから」・・・・。 そこで玲子も納得・・・・、というわけで、そこに伸子の最大のオシャレを見たわけです。 そして真っ白で糊の利いた開襟シャツ（これはとても綺麗好きなお母様が綺麗にアイロンを掛けて下さっていました）と黒のタイトスカート・・。 清潔そのもので、とても素敵でした。
（２００３‐９‐２６）